場面緘黙症(かんもくしょう)とは?症状、原因、不安を取り除くための適切な接し方・支援方法
場面緘黙症(選択性緘黙)の定義と特徴
場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)、または選択性緘黙(Selective Mutism)とは、子どもが特定の状況や人に対して話すことを一貫して拒否する状態を指します。
「話さないことを選んでいる」と誤解されがちですが、実際は、強い不安や恐怖のために話したくても声が出せなくなってしまう不安障害の一種とされています。
- 家庭や親しい人の前: 通常通り問題なく話すことができます。
- 学校や社会的な場面: 話すことを期待される状況(授業中、店員とのやり取りなど)で、一貫して話せなくなります。
⚠️ 全緘黙症について: すべての場面で誰とも話せない状態は「全緘黙症」と呼ばれていましたが、現在はDSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)において、通常は場面緘黙症として「不安症(不安障害)」のカテゴリに位置づけられています。
🔎 場面緘黙症の原因:「話せない」背景にある強い不安
場面緘黙症は、単なる「人見知り」や「反抗心」ではなく、医学的に説明される状態です。
現時点では、原因は一つに特定されていませんが、以下の要因が複合的に関わると考えられています。
1. 心理的・遺伝的要因(不安障害との関連)
- 社交不安:
人前で話すことや失敗することへの過剰な不安や恐怖が原因の中核にあると考えられています。
DSM-5でも不安症のカテゴリに含まれます。 - 遺伝的傾向
家族や親族に極度に内気な人や不安障害を持つ人がいる場合、発症リスクが高まる傾向が指摘されています。 - 脳機能の過敏性
脳の扁桃体(不安や恐怖を感じる部分)が刺激に対して過剰に反応し、話すという行動を抑制しているという仮説もあります。
2. 環境的要因
- 急激な環境の変化
転校、クラス替え、引っ越しなど、新しい環境への適応が大きなストレスとなる場合があります。 - 言語的な困難
バイリンガル環境や、新しい言語環境に置かれた際のストレスが、緘黙を引き起こす要因となることもあります。
👂 緘黙症の子どもへの適切な接し方と支援
緘黙症の克服には、「話すことへの不安を取り除く」ことが最も重要であり、無理に話させようとすることは逆効果です。早期の適切な対応が、改善の可能性を高めます。
1. 周囲の人が心がけるべきこと(接し方の基本)
| 対応の原則 | 具体的な行動・声かけ |
| 無理に話させない | 「話さなくても大丈夫だよ」「話せないのはあなたのせいではないよ」という安心感を与える。 |
| 話以外の方法を尊重 | 筆談、ジェスチャー、絵、指さしなど、発話以外のコミュニケーション手段を積極的に受け入れる。 |
| 質問を避ける | 「〇〇ちゃんはどう思う?」など、回答を強要するオープンな質問は避け、「この本、面白いね」など感想や意見を伝えて圧力をかけない。 |
| 寄り添いと共感 | 話せないことによる孤立感や孤独感に寄り添い、言葉ではなく笑顔や温かい態度で優しさを伝える。 |
2. 専門的な治療とスモールステップ
場面緘黙症に対する特効薬はありませんが、専門的な介入によって不安を軽減し、コミュニケーション能力を高めることができます。
- カウンセリング
臨床心理士や専門家によるカウンセリングを受け、不安のメカニズムを理解し、対処法を学びます。 - 行動療法(スモールステップ)
不安の少ない場面から少しずつ成功体験を積み重ねていく方法です。
親しい人との間で声を出す練習。先生に録音した声を聞かせる。先生に小さな声で挨拶してみる。
このように、本人が「できた!」と達成感を得られる小さな目標を段階的に設定し、自信を育てます。
3. 早期相談の重要性
「うちの子は人見知りが強いだけかも?」と迷う場合でも、幼稚園や小学校で話せない状況が続いている場合は、早めに専門家(精神科医、小児科医、臨床心理士、スクールカウンセラーなど)に相談することをお勧めします。
年齢が高くなるほど、習慣化して改善が難しくなる可能性があるためです。
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